2006年7月11日 (火)

W杯現象

ロブ(以下、R:サッカーのW杯が終わりましたね。僕は、野球が好きなので、寝不足になってまで観戦しませんでした。でも、日本が負け続ける度に、にわかサッカーファンが消えていきました。  前回の日韓W杯では、香山リカさんの「プチナショナリズム症候群」(中公新書ラクレ)でW杯に 燃える若者たちの動きを右傾化ではないかと指摘していました。
 今回もかなり、その右傾化傾向はあるのではないかと思われましたが、やはりJリーグの盛り上がりが示しているように、にわかサッカーファンによる、サッカーブームが起きただけに感じました。
 渋井さんは、W杯ご覧になりました?

渋井(以下、S):私もW杯は見ましたよ。日本戦も三試合とも見ました。それと、チェコとアルゼンチンを応援していたので、その関連試合はなるべく見ていました。野球のWBCも見ましたが、野球のときは日本を応援していたですね。
 にわかサッカーファンはたしかにいると思いますが、それ自体は悪いことではないと思いますよ。にわかファンが本物のファンになることもあるし、にわかファンが祭りを楽しむことだって、悪いわけじゃない。
 中学の時に野球部、高校の時にはサッカー部、のちに陸上部だった私ですが、野球やサッカー、陸上を知らない人にも、試合をみてもらいたいって発想も、当時からあったので、にわかファンはそれなりにいてほしいです。
 ただ、今回のW杯の場合は、にわかファンを当てにした視聴率合戦があったことはすでに言われています。そのため、日本の試合が3試合のうち2試合がゴールデンタイムになるべく近くした時間でした(日本時間で午後10時)。ちなみに、ブラジル戦は、ブラジルのゴールデンタイムに合わせていたようですが。そうした視聴率合戦によって、選手には不利になりかねない条件になったことはあるでしょうね。
 右傾化という話ですが、たしかに、こうした現象は政治にもみられます。衆院千葉七区の補選も、民主党の候補が勝ちましたが、20〜30代は自民党の候補に入れたと言われています。しかし、2ちゃんねる等でもみられる右寄りの書き込みは、思想的に「右」というよりは、「右」であることで祭りに参加できる、といった現象ではないかと思います。

R:テレビの視聴率合戦によって、日本の実力が過大評価されていた面はあると思います。 その結果かわかりませんが、孤軍奮闘した中田が引退してしまった。最後まで諦めないという個性が生かされたといえば聞こえが良いですが、やはりジーコ型の個性尊重は日本の選手育成には適していなかったということでしょう。
 野球もサッカーも、参加する事じゃなく、やっぱり結果が大事だと思います。ゲームの中で、ルールを守ってやるのだから、結果が出なければ意味がないと僕は思っています。
 そういう意味では、ジェフ市原のオシム監督が、二年でも走るサッカーを叩き込めば、日本は変わると思うんです。右傾化したような祭り現象でも、日常から離れることはストレス発散になりますしね。
 しかし、司令塔であった中田が”自分探しの旅”に出るのは意外でした。一般人レベルでは、死語と化していた”自分探し”を中田が言い出したのは、日本に戻りたくない、日本の低レベルなマスコミと関係を持ちたくないというのもあるでしょう。海外でサッカー選手として成功した中田ですが、イチローほど雄弁ではない。だからこそ、中田はサッカーから離れるのかわかりませんが、指導者になるのか、タレントになるのかどういう方向へ向かうのか休みたいのでしょう。
 しかし、自分探しがブームにならないことを祈るばかりです。まあ、メンヘラーが彼らの自分探しのエンパワーメントの材料として彼の言葉を引用しないとは思いますけどね。

S:日本の実力を過大評価しなければ、ならなかったのでしょうね。そうしないと、番組づくりができなかった。バラエティー番組でも、W杯にからんだものが多かったのですが、それは、笑いのネタが自ら産み出されるものではなく、W杯本番への予告にすぎなかったのでしょうね。
 中田引退は、私としてはどうでもいい話です。たしかに、日本サッカーをリードした存在として評価すべきでしょう。しかし、プレイスタイルが特に好きでもない。それに、プロであれば、エンターテイメント性も兼ね備えることも求められ、イチローはそれができていますが、中田はできなかった。
 日本のマスコミが低レベルと思っていたのかどうか。結局、中田だって、マスコミを利用していたわけで、ある意味、共犯関係だったと思います。日本のスポーツ・ジャーナリズムはたしかにレベルが高いとは言いませんが、壁ばかりを作ってしまっては、余計にスポーツをきちんと報道できなくなるとは思います。私としては、中田の態度が逆にレベルを低くさせた面もあるんじゃないかと。
 自分探しの旅発言も、古いと思いました。たしかに、死後に近い言葉です。しかし、それが中田の感性だったのでしょう。ブームの再来があるかどうかですが、いまのところ、それを乱用する人はいないですね。私の回りでも、ギャグで使う人しかいませんし。
 ただ総じて、視聴率ばかりを狙ったスポーツ・ジャーナリズムは考え直さないといけない。いまや、巨人戦も視聴率10%を切ってしまい、フジテレビは原則、巨人戦を打ち切り、と発表しました。そうすると、余計に巨人ファンや野球ファンは離れていくような気がします。サッカーだって、普段のJリーグは深夜枠で録画放送が多くなっています。スポーツを生で見る習慣がなくなれば、さらに視聴率低下を生みます。しかし、サッカーのW杯だけが浮き足立つ結果を招くんじゃないでしょうか。

R:巨人ファンとしては、フジテレビの決断は痛かった。しかし、故障者がどれだけ出るかというところまで、原監督がある程度計算していれば、6月以降の失速はある程度は抑えられたと思うんです。でも、フロントが元阪神のアリアスなんかをメキシカンリーグから引き抜いてくるのが、自虐的にしか見えません。
 スポーツを生で見るという感覚は、かなり薄れてるんじゃないでしょうか。それは、音楽のライブに行く人が少なくなっているのを見ればわかります。生で見たいと思うのは、熱狂的なファンか、祭りみたいな一体感が欲しい人でしょう。
 今は、ネットでもスポーツ中継見られますし、HDDレコーダーの普及で、生と遜色ない画質で見ることができる。DVDの普及も関連しているでしょう。そう考えると、生でスポーツ観戦みたいなのはどんどん減っていくのではないでしょうか。
 日本ハムの新庄並のエンターテナーが野球界に表れないと、テレビやマスコミも小ネタとして使えるものがなくなってしまいます。プロスポーツは、真剣勝負も見どころの一つですが、エンターテイメントとしての面を持った実力を伴った選手が出てこなければ、視聴率が上がることも、観客動員数が上がることもないでしょうね。

S:スポーツを生で見る感覚が薄れているとは必ずしも言えません。
 http://www.d7.dion.ne.jp/~xmot/kankyaku.htm#00-01
 これは、プロ野球の観客動員数ですが、プロ野球全体としてはやや増えています。特にパリーグは増えています。やはり、テレビ観戦が、動員数が伸び悩んでいる巨人戦がメインになっていることが原因のひとつだと思うんです。ちなみに、巨人は、空席が目立つため、関連会社にチケットを配っているが、それでも入らないという話を聞いています。
 ただ、Jリーグの場合は、
 http://www.j-league.or.jp/aboutj/katsudo/douin.html
 のように、観客動員数は減っています。
 観客動員数の数字だけみれば、サッカー人気は落ちていて、野球人気は変化はありません。とくにテレビメディアが、「虚構」であるサッカー人気を過度に盛り上げていることがわかります。

 こうした数字をコアと考えた場合、コアファンの変化がないプロ野球と、コアファンが減少しているサッカー。こんな時に、テレビが煽れば、余計にサッカーのコアファンはテレビから離れていくでしょうね。しかも、タレントの安易なコメントはしらけさせるでしょうね。そして、いまさら、「私たちは中田を何もわかっていなかった」的な番組さえある。自作自演とも言える状況ですね。
 エンターテイメントとしては、たしかに、にわかファンを含め、コアではないファンを獲得するのには必要です。新庄はそうした人の一人だしね。でも、新庄なきあとの日本ハムはどうするのか。ある札幌人は、新庄がいなくても日本ハムを応援すると言っていました。ただ逆に、楽天のように、弱くても、新庄のようなエンターテナーがいなくても、かつての弱かった時代の阪神のように極端に観客動員数が減りません。
 確実にいえるのは、巨人ファンを中心としたプロ野球報道や、日本代表を中心としたサッカー報道は行き詰まっていることが言えるでしょう。W杯のような一時的な「祭り」での視聴率合戦をしていれば、中田のように口を閉ざす選手も今後、出かねないですからね。

R:阪神に関しては、阪急との経営統合で、去年の村上ファンドによる買収騒ぎみたいに、 コアなファンを怒らせないで欲しいですけどね。楽天、阪神ファンが熱狂的なのは、楽天は念願のプロ野球球団の誘致成功、阪神は、関西人=阪神ファンみたいな公式化された教えを小さい頃から受けてる人が多いですよね。ただ、他の球団は、エンターテイメントやスター選手に頼らざるを得ない状況があります。
 しかし、巨人は、李が目立ってるモノの、他の高橋由伸、故障中の小久保などスター性という意味では如何せん小粒なのが多すぎる気がします。上原もそんなにスター性があるとは言えませんしね。
 僕が小学生の頃は、原、クロマティ、中畑などスター性と実力が伴った選手がいました。 ピッチャーなら、斎藤、槙原、抑えの鹿取など地味ながらも見ていて、野球選手に憧れたくなる選手が巨人にはいた。それが、今はいないのが、人気低迷の一つの原因だと思います。
 一方、サッカーは、海外進出組以外は、スター性のある選手が全くいない。スター性とは、サッカーファンでもない人ですら知ってるレベルだと思います。それは、野球でも同じ。サッカーは、チームがホームグラウンドを転々と変えたり、J2からJ1昇格チームの情報が少なかったり、偏ったスポーツ報道にも問題があると思います。
 だから、中田なき後に、サッカー人気の真価が問われるのではないでしょうか。

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