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2006年3月 8日 (水)

ひきこもり・フリーター・ニート

ロブ(以下、R):少し話題を変えて、ひきこもり・フリーター・ニートに関して話しましょうか。まあ、この問題は様々な議論がされていて、どのくらいいるのかというデータも契約社員もフリーターと換算するという方法も取られています。厳密に言わなくても、我々はフリーランスですので、フリーターの定義に当てはまるでしょう(笑)

渋井(以下、S):私は36歳です。厚生労働省の定義では、フリーターは34歳までなので、私は、フリーターではないですねが(爆)

R:ひきこもりやニートを精神科の治療対象や強制的な自立支援に参加させる風潮には疑問を感じます。要するに、正社員になることが必ず幸せになるという日本的妄想が、若者を苦しめた結果として、ひきこもり・フリーター・ニートが出てきたとも言えるのではないでしょうか。
 ただ、ニートに関しては、命名者の玄田有史さんが、社会的慣習とかいう言葉で定義づけていて、この三つがいつも「100万人と推定される」と識者たちが言うのには疑問が残るんです。
 渋井さんは、この問題についてどうお考えですか?

S:最近、フリーター・ニート問題に関する共著(仮題『サイレントレボリューション〜ITによる脱ニート・脱フリーター』、4月頃出版予定)を書いていて思ったのですが、そもそも、定義上のニート、つまり、働く意思もなく、教育訓練も受けていない(学校に行っていない)34歳までの若者がどれくらいいるのだろうか、って。
 ニート状態にあっても、たとえば、精神疾患があって休んでいたり、ニートとフリーターを繰り返したりしています。あるいは、就労していなくても、不動産収入や株の配当で収入を得ている人もいる。だから、どれくらいのニート状態にある人が「ニート」と呼ばれるのか、分からなくなったんです。
 しかも、ニート問題を語る上で、ニートたちの個人的な資質、やる気などが問題になることもあります。でも、フリーターやニートを生み出したのは、産業構造の問題であるはずです。たしかに、正社員になることが幸せかどうかという問題もありますが、経営側は正社員を少なくして、安価な、しかも流動的な労働力としてのフリーターを必要としているわけですから。

R:確かに、フリーターという言葉が人口に膾炙したのは、バブル経済崩壊前後の1990年前後です。終身雇用制に反対している若者がフリーターとか、いい加減なことを言う人もいますが、むしろ雇用形態の多様性が日本にはなかったわけです。
 パラサイトシングルなんかもそうですが、2007年定年退職大量発生問題で騒がれる団塊の世代がお金を貯め込んでるのだから、その余剰で子どもが暮らしても何ら問題はないんです。
 こういうことを言うと、「こどもたちが自分で稼ぐことを覚えなかったら、親が死んだ後どうする」と反論されます。でも、日本の現状を考えると、民主党が掲げる、「フリーターでも社会保障を受けられる社会に」という変換が、一番有効なフリーター・ニート対策だと思います。日本は、フリーランサーに厳しいですからねぇ(笑)
 ただ、ニート・ひきこもりは、精神疾患の可能性もあるのでその判別をできる精神科医の育成、診断基準の作成が急務でしょう。ただ、精神科の診断基準の作成は個別性があって難しいとは思いますけどね。
 だから、社会の雇用多様性に集団ヒステリーが起こってるから、この問題が注目されてるだけのような気もします。
 

S:ただね、フリーター・ニート・ひきこもり。これらの問題を考えるとき、きちんと整理する必要があると思いますよ。一緒にすると、混乱しませんか?
 まず、フリーターは、なんらかの理由で正社員ではない状況ですよね。産業構造の変化そのものがフリーターを生み出しました。産業側から見れば、正社員だけでなく、派遣労働やアルバイトを必要とした面があります。労働力を安く確保するためですよね。そして、働く側からすれば、正社員として働くことが重視という人ばかりでなく、趣味重視という人も出てきた。働き方の多様化・個性化ですね。
 一方、ひきこもりの場合は、精神的な問題として浮上してきました。いわゆる、閉じこもりの状態になっている場合ですよね。そして、ひきこもりにも濃度があるとは思いますが、典型的なひきこもり状態の人がどれくらいいるのかは未知数ですよね。そして、そうした状態の人のうち、精神疾患が理由ではない人たちを、斎藤環さんは「社会的ひきこもり」と定義しました。
 そして、ニートですよね。いわゆる、若者の無業者のうち、失業者でも、フリーターでも、学生でもなく、働く意思がない人たちです。もともとはイギリスの若者就労政策からの概念が、いつの間にか、日本では、フリーターの定義と同じ「34歳まで」と枠が広げられた。
 違った概念にもかかわらず、なぜか、「フリーター・ニート・ひきこもり」として一緒に語られがちで、しかも、「ひきこもり・ニート支援」として、支援する業界を生み出しました。ここに、不登校なんかも入ってくる場合がありますね。
 こうして考えるとき、私は、ひきこもりとニートがなぜ一緒に支援を受けるのか、よくわからないですね。たしかに、かぶっている人もいるかもしれませんが、質が違う問題なのに、って思います。

R:そうですね。一応、フリーターは社会的接点を持っている人ですし、ひきこもりでも広義な意味では、週に一回数時間程度アルバイトをしている。ニートに関しては、『ニートって言うな!』で内藤朝雄さんが精神分析的な視点から分析していますが、確かに、精神科医の笠原 嘉さんが名付けた退却神経症の方が良いかもしれません。
 これはひきこもりの心性にも当てはまるので、心的世界の分類はやはり
難しいかも知れませんね。でも、確かに、渋井さんの言う「ひきこもりとニートがなぜ一緒に支援を受けるのか、よくわからない」というのは同感です。ニートは病気という意味合いはほとんどないですからね。親からすると、「怠け者」で一蹴されてしまう。
 ただ、処方箋として、軍役を課すなんて議論もありますが、韓国では、ひきこもりが増えてきているという報告を見ると、軍役制が現実的なこの問題への処方箋たり得ないと思うのです。
 ならば、もっと自由な職業形態の選択があるということを、義務教育のウチから教え込む方が良いのではないでしょうか。正社員になることが、幸せなんて妄想を後生大事に、20歳近くまで持ってる方が、逆に現状を悪化させるだけだし、ひきこもり・ニート・フリーター差別意識こそが、大量生産の元凶となると思うんす。

S:ニートは若者無業者であって、即、失業者ではない。だから、労働市場の問題とはまた別だと思うんですよ。ニートは、就職活動してないし、就労意識もない。しかし、失業者は、就職活動をしていて、就労意識もあるわけです。その失業者の周辺にフリーターがいますよね。
 それに、同じ『「ニート」って言うな!』の第一章を担当した本田由紀さんによれば、本場イギリスでの「NEET」は、16〜18歳といった、ごく狭い若者の労働問題だったはずです。しかも、貧困や低学歴、人種的なマイノリティ等の「社会的排除」と結びついていた、といいます。しかし、日本版の「ニート」では、なぜか34歳までと広げられ、社会参加のしていない若者層といったイメージで捉えられる。そして、厚生労働省もフリーターの定義の年齢と同じにする。
 そこで、フリーターとニートがあたかも同じような問題であるかのようにイメージされてきたんじゃないでしょうか。そうした背景の中に、自民党の新人・杉村太蔵議員が、あたかも「フリーター・ニート」の代表であるかのように宣伝される。そして、頑張れば何かができるんだと。彼の場合は、頑張ったのは小泉さんですが(笑)。
 ちなみに、彼はブログ(060221)で、
 「(来年度予算に) ニート対策、フリーター対策という名目で380億円という金が注ぎこまれている。380億、これ全部国民の皆様の税金ですからね。そんなに金をかけなくても僕たちは自分たちの力で仕事を見つけるし、現に国がわざわざ税金を使ってやらなくても、既存の民間企業が様々なセミナーや就職情報を提供してくれています。」
 と書いています。ニートやフリーター問題を、個人の問題として捉えすぎですよね。完全に、マッチングの問題にしてしまってる。たしかに、マッチングは、フリーターの問題のひとつとして重要ですが、それ以上でも、それ以下でもないですから。
 精神分析的な「ニート」論は、その本田さんからすれば、ニートの多様性のひとつにすぎません。同書でも展開しています。そして「学生」や「正社員」、「主婦」を、いわゆる社会的な「安定層」として、「フリーター」や「失業者=求職型」、「(働く意欲はあるが、今は求職活動をしていない)非求職型」の「不安定層」、「(今は働く必要もなく、予定もない)非希望型」と「働く意欲がない」の「不活発層」に分けています。その「働く意欲がない」若者の中に、「ひきこもり」や「犯罪親和性」がある若者がいる、としています。
 この本田さんの分類と、内田さんの分析を加えれば、たしかに、ニート(本田さんの言葉で言えば、「不活発層」)の中に、精神分析の文脈で考えられる人たちがいることになりますよね。


R:イギリスのニートなんですが、そんなに本国で騒がれてるわけではないんですよね。あの国こそ、今の階級社会の原型で生まれた家の階級を変えることはできません。何十億も稼ぐベッカムも、ナイトの称号をもらっても労働者階級です。
 だから、イギリスからニートの概念を引っ張り出してくることに無理があったはずなのに、なぜかすごくニートって言葉が一般化し問題化しているように見える。ただ、実際は、そんなに問題なのかどうかっていうニートによる個人意識の調査ってのは行われていませんよね。
 これは、ひきこもりも『ひきこもりカレンダー』の著者である勝山実くんみたいな存在もいるわけで、そういう当事者側から声を聞く姿勢が行政や国側にはないような気がします。もちろん、ヒアリングはしている。ただ、ヒアリングの目的は働く意欲を持たせることにあるから、敏感な人間は、本音を言いません。
 僕も取材で何人か、ニートやひきこもりの人と会いましたが、「結局、僕たちを国は強制労働させたいんでしょ」と言う。その辺の、当事者と国や行政の意識の乖離の差を少しでも埋めない限り、社会に少しは実りがあるという意識は持たせられないんだと思います。
 社会に出ることはどんな意味があるのか?お金を得るためには、汗水垂らして働かなければならないのか?という疑問を彼らから投げつけられたときに、即答できる答えが見つかりませんでした。それは、生きる意味はあるのか?という問いと同義で、答え無きものではないかと思うんです。

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